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zoom RSS 今は認知症でも当時は恍惚の人

<<   作成日時 : 2013/05/14 21:33   >>

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恍惚の人
1972年6月新潮社

痴呆老人を扱って、当時の流行語にもなったほどの有名な作品。誰もが避けることのできない「老い」。
身近な家族が痴呆になったら、もし自分が痴呆になったら。深刻な問題を暗くならずに読ませる名作。


感想
 有吉佐和子を知らなくても、『恍惚の人』という書名を知っているという人も少なくないだろう。こんなに暗く重いテーマを、こんなに明るく、ある意味面白く読ませるなんて、有吉さんならではである。
 今読んでも古い感じがしない・・・ということは、困ったことである。もしかしたら惚けてしまうかもしれない可能性は、誰にでもある。老人福祉は進んでいるのだろうか。解説にもあるように、「本書が一日も早く歴史上の本になること」を私も切に願っている。
 本書の主人公昭子が、それまで受身で迷惑に考えていた茂造の介護を、主体的に「生かせるだけ生かしてやろう」と決意を固めるシーンがあるが、ここを読んだとき『非色』の笑子を思い出した。彼女が、自分もニグロなんだと覚悟を決めるシーンと似ている。有吉さんの描く女性は、皆、逞しい。困難に負けない強さが、私はとても好きである。
あらすじ
 小雪がちらつく中、家路を急ぐ昭子は、ただならぬ様子で外出途中の舅の茂造と近所で出くわす。どこへ出かけるのか訊くが答えず、一緒に帰宅する。昭子がたまった家事に精を出していると、離れに住む茂造が来て、姑が起きてくれないので空腹で困っていると言う。驚いて様子を見に行くと、姑は玄関で倒れて事切れていた。身内で葬儀を出すのは初めてのことで、昭子はてんてこ舞いをする。しかしさらに困ったことに、茂造は惚けてしまっていたのだ。
 彼は自分の息子や娘のことは忘れてしまい、どういう訳か、いじめ抜いていた嫁と孫のことは覚えている。結果、茂造の面倒は昭子一人が見なければならなくなってしまう。ずっと共働きでやって来た昭子にとって、働くことは単に収入を得るためだけのものではなかった。舅の介護の負担と仕事との板ばさみで、心身ともに苦しむ昭子。それなのに、茂造のような老人を預かってくれたり、面倒を見てくれるような施設は皆無。結局、自分たちで何とかするしかないのだ。
 ある時、風呂で溺れた後に肺炎にかかった茂造が、奇跡的に命を取り留めたのを見て、昭子は舅の介護への決意を新たにする。
 病気をきっかけに茂造の老化はいっそう進み、子供のような無垢な笑顔を見せるようになる。しかし便をそこら中に塗りつけるような人格欠損の症状を見せて間もなく、茂造は安らかに亡くなった。
本文より抜粋
 精神病なのか、老耄は。
 痴呆。幻覚。徘徊。人格欠損。ネタキリ。
 茂造は部屋の隅で身体を縮め、虚ろに宙を眺めている。人生の行くてには、こういう絶望が待ちかまえているのか。昭子は茫然としながら薄気味の悪い思いで、改めて舅を見詰た。彼は精神病だったのか。昭子は夜中から起きてしまって、だから睡眠不足で、そのために頭がまとまらないのだと思った。が、要するに老人福祉指導主事は、すぐ来てくれたけれど何一つ希望的な、あるいは建設的な指示は与えてくれなかった。はっきり分ったのは、今の日本が老人福祉では非常に遅れていて、人口の老齢化に見合う対策は、まだ何もとられていないということだけだった。もともと老人は、希望とも建設とも無縁な存在なのかもしれない。が、しかし、長い人生を営々と歩んで来て、その果たてに老耄が待ち受けているとしたら、では人間はまったく何のために生きてきたことになるのだろう。あるいは彼は、もう終った人間なのかもしれない。働き、子孫を作り、そして総ての器官が疲れ果てて破損したとき、そこに老人病が待っている。癌も神経痛も痛風も高血圧も運よくくぐりぬけて長生きした茂造のような老人には、精神病が待ちかまえていたのか。

収録書籍*〜*〜*
『恍惚の人』新潮社・新潮文庫・新潮社有吉佐和子選集第2期第8巻
新潮現代文学『有吉佐和子』
参考情報*〜*〜*

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