認知症ケアに対する評価

今こそ「介護」側の認知症ケア再評価を

平成24年度から施行される介護報酬の改定について、日本認知症グループホーム協会(以下、GH協会)が見解を示しました。「1ユニット1名の夜勤職員必置」という人員基準見直しや1ユニットのホームにおける夜間ケア加算の増額などについては評価を示したものの、基本報酬における「フラット化」がなされてことには強く批判しています。

協会の見解の背景には、要介護度が軽度の人でも、早い段階から手厚いケアを提供する中で周辺症状の緩和を図ってきたという現場の実態があります。この点を受けて、「要介護度が軽度でもケアの手間は大きい」という主張は、わが国におけるグループホーム創設の頃から強調されてきました。今回のフラット化は、そうした認知症ケア独特の事情が脇に追いやられたという印象が確かにあります。

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仮に、今回のようなフラット化を図るのであれば、(1)認知症の介護にかかる手間がきちんと要介護度に反映されているのかを検証すること、そして、(2)早期のかかわりによって周辺症状が緩和されるという「認知症ケア」の効果を反映した初期加算の増額ということが、同時に必要だったのではないでしょうか。

グループホームが認知症ケアの切り札と言われて久しいですが、一方で、「早期のかかわり」への評価が医療のみに向けられ、介護分野における認知症ケアが軽視されるという傾向が強く現れています。これはグループホームに限らず、今回の介護報酬全体に言えることです。医療や看護との連携にかかる加算がいくつも生まれていますが、介護が培ってきたノウハウそのものを評価する部分が少ないという傾向が見られます。現場からも、「まるで診療報酬の体系に近づいているようだ」という声がいくつも聞かれます。

今回のGH協会の見解の中には、厚労省との間で、「今後の認知症ケアのあり方」について検討・検証を行なうことが確約されたという旨が記されています。これはGH協会にとどまらず、例えば、認知症ケア学会や認知症介護研究・研修センターなど、「ケアの方法によって周辺症状などがどれだけ改善するか」を長年研究・実証してきた団体が揃って参加し、改めて認知症ケアの体系化を図るという大きな流れに持って行ってもらいたいものです。

そもそも、医療機関が認知症をきちんと診断できるのか、周辺症状を薬だけで抑えようとしていないかという点で、いまだに介護現場からは懐疑的な声が絶ちません。あるケアマネは、利用者が夕方になると不穏になるのを見て、「行政が難色を示す」散歩介助をあえてケアプランに盛り込みました。すると、リフレッシュ効果からか、周辺症状が一気に落ち着いたといいます。しかも、それだけではなく、実はそれほど中核症状も進んでいなかったことが分かったのです。

つまり、疲労した家族などによる「閉じ込め」があり、それが周辺症状を拡大するなど、いわゆる「作られた認知症」の状態であったことが推測されました。しかしながら、担当した医師によると、「かなり進んだ認知症」という診断を下したといいます。適切なケアにより、早期に周辺症状が緩和できていれば、医師の診断はどうなっていたのでしょうか。

こうしたエピソードを聞くたびに、「介護の手間を増やし、介護保険財政を悪化させている」のは、実は「よりよいケアを提供している事業所等をきちんと評価していないこと」にあるのではと思われてなりません。GHなどが長年培ってきたノウハウをもう一度適切に評価する作業が、今こそ求められています。

(福祉ジャーナリスト 田中 元)

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